ヒストグラム
187 x 250 (12 kB)
自動車のエアバッグ装着は当たり前になったが、さらに進んで事故を未然に防げないか。いま、そんな車やバイクの開発が進められている。人はどこまで車に安全を委ねられるのだろうか。
怒って目尻をつり上げたようなライト、大きく開いた口に見立てた前輪。
ホンダが開発したバイクのデザイン。
人間の脳は、人の顔に敏感に反応する。
表情で相手の考えを見抜き、状況に応じて対処する。
ならばバイクの前部を顔面に見立てれば、注意を引くのではないか、との発想で「人面バイク」が生まれた。
実際に、MRI(磁気共鳴画像化装置)を使って、このバイクを見る人の脳の反応を調査した結果、人の顔を見たときに似た変化を示した。
バイクと四輪車では、同じ地点を同じ速度で通過しても、小さいバイクの方がより遠くに、より遅く進んでいると錯覚しがち。
人面バイクは他のバイクよりも距離感で10%、速度感で20%改善した。
ただ、顔面を強調するとデザインが悪くなる。
本田技術研究所の櫛田和光・主任研究員は「効果と商品性を両立させるのがデザイナーの腕の見せどころ」と話す。
まだ販売計画はないが、いずれは市場に投入する予定。
IT(情報技術)を駆使した防止策も注目されている。
自動車やバイクに通信機器を積み、互いの位置や速度などの情報を交換して事故を防ぐ「車車間通信」と呼ばれるシステム。
国土交通省の呼びかけで国内の四輪・二輪メーカーが開発を急ぐ「先進安全自動車」(ASV)の機能の一つで、各社の試作車を持ち寄った走行試験を7月から行い、効果を検証している。
早ければ2008年ごろには商用化されそうだ。
通信の規格は各社共通だが、得られた情報をドライバーに知らせ、事故を回避する「仕掛け」が知恵の絞りどころ。
ホンダのASVは、障害物に近づきすぎると、アクセルペダルを震動させて運転手に注意を促す。
それでも、ハンドルさばきが悪ければ事故につながる。
トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」は、より自動化を進めた。
車輪やブレーキに取り付けたセンサーが自動車の動きを監視し、滑りやすい路面で横滑りしそうになれば、コンピューター制御により車輪の向きや回転を適切に自動操作して直進を維持する。
もっとも、ハイテク航空機のような「自動運転」は難しい。
空に比べて対向車や歩行者など事故につながる「障害物」が多いからだ。
開発できたとしても、運転を機械に任せて事故が発生した場合、メーカーの製造物責任(PL)の壁がある。
開発中のASVは「運転手を手助けする位置づけ」(国交省)で、システムの情報をどう生かすかは運転手の責任。
一方、富士重工業は21日開幕の東京モーターショーに、障害物にぶつかりそうになると強制的にブレーキがかかる機能を持った車を出展するが、「市販は考えていない」という。
ここまで自動車に判断を委ねてしまうと、PLの問題が避けて通れないためだ。
「訴訟社会の米国では、メーカーが事故の責任を問われたくないために、最新技術の導入をためらうことも想定される」(メーカー技術者)との声もある。
海外の動向を見極めながら、メーカーの責任か、運転手の責任かの線引きを明確にすることが実用化の前提となっている。