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マツダが広島県警にパトカー提供する狙い…大手自動車メーカーの“仁義なき戦い”
一昨年そして今年の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得し、絶好調のマツダがパトカーでも殴り込みをかけている。
広島県警にスポーツ用多目的車(SUV)「CX-5」を提供、自慢のクリーンディーゼルエンジンの走りを冬場の高速道路でアピールする。
安全性や四輪駆動(4WD)で米国でバカ売れの富士重工業も警察庁に「スバル レガシィ」を大量納入。
パトカーといえばトヨタ自動車の「クラウン」のイメージが強かったが、ついに「仁義なき戦い」はじまる?!
■冬の中国道で性能や信頼性アピール
マツダはこれまで販売会社経由で警察にスポーツタイプのRX-8などを納めることはあったが、今回メーカーとして初めて、広島県警高速隊に「CX-5」をモニター提供した。
車両は2台で、いずれも排気量2.2リットルのディーゼルエンジンを搭載した4WDモデル。
4リットルのガソリンエンジン車並みの力強い走りと1リットルあたり18キロの低燃費、さらにタイヤスリップをリアルタイムで感知し、前後輪の駆動力配分を自動コントロールする4WDシステムが売りだ。
一昨年に日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、性能は折り紙付き。
中国横断自動車道尾道松江線の全線開通など、高速隊の守備範囲が広がる中、冬は積雪も予想される厳しい環境下で活躍が期待される。
金井誠太会長は「シビアなコンディションで走行性能をモニタリングすることにより、安全で耐久性のあるクルマづくりに役立てたい」とモニター提供の狙いを語る。
パトカーに使用される車両はドライバーの目を引き、PR効果も大きい。
特殊車両として架装などの生産に手間はかかるものの、「警察が使っているということで信頼性や頑丈さの証になる」(業界関係者)うえ、社会貢献もアピールできる。
■クラウン牙城にスズキやレガシィ攻勢
一般的にパトカーは警察庁に一括して納入し、それが各警察に配備されるケースと、各地の警察が地域の販売店などから購入するケースがある。
入札が行われており、メーカーの正確なシェアは不明だが、「これまでトヨタのクラウンが多く採用されていた」(大手メーカー)という。
ただ、最近は変化が起きている。
平成24年にはスズキが警察庁から中型セダン「キザシ」約900台を受注。
全国の警察に配備され、覆面パトカーなどに使われることになった。
ただ、月に2ケタほどしか生産されず、国内ではあまり見かけない車種だったため、「知っている人がみれば覆面だとわかる」とネットなどで話題に。
さらに、「キザシ」は通常なら200万円以上とスズキの中で高価格帯の車だが、「入札は破格の提示で、工場の稼働率向上狙いもあるのでは」と業界でも噂になった。
一方、富士重工業も昨年から今年にかけ、5代目レガシィを警察庁に約900台納入。
法人営業担当が攻勢をかけており、入札で受注を勝ち取ったという。
マツダも富士重も26年9月中間決算で過去最高の最終利益となるなど、業績は好調だ。
これまでの地道なクルマづくりが実を結び、走行性能が国内だけでなく、米国など海外でも支持されている。
逃走車両はうれしくない(?)かもしれないが、今後はパトカーとしても存在感を高めそうだ。