ヒストグラム
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2006年の元日は普段の1日より1秒長くなる。
世界標準時(英国)の元日午前0時00分00秒(日本時間同日午前9時00分00秒)の前に、31日午後11時59分60秒(同1日午前8時59分60秒)という「うるう秒」が入るためだ。
うるう秒の実施は1999年元日以来7年ぶり。
背景を探ると、たかが1秒、されど1秒である。
日本標準時を決めている独立行政法人・情報通信研究機構(東京都小金井市)の高橋幸雄・日本標準時グループリーダーは「うるう秒が必要になったのは、日常生活に根ざした太陽の動き(地球の自転)とは無関係に時間が定められるようになったからです」と説明する。
「1秒」はもともと、公転(地球が太陽の周りを1周すること)に要する時間や、地球の自転の速さなどを基準に定められていた。
しかし、こうした天体の運行を基準にする「天文時」よりも高精度の「原子時計」が発明され、1958年に導入。
現在の世界標準時(協定世界時)は、国際度量衡局(本部・パリ)が世界の250台以上の原子時計を平均して決めている。
一方、地球の自転速度は徐々に遅くなっている。
国立天文台(東京都三鷹市)の片山真人・上級研究員(位置天文学)は「月や太陽から受ける引力によって潮の満ち引きが起こるように、地球全体がわずかながら伸び縮みしている。これにエネルギーを要するため、回転のエネルギーが徐々に失われるのが大きな要因」と語る。
地球の自転の不規則な変動のため、天文時と協定世界時は少しずつずれてくる。
地球の自転を観測している国際機関・国際地球回転事業(本部・パリ)は、必要に応じてこのずれが0.9秒未満に収まるように調整する。
これがうるう秒というわけだ。
つまり天文時にはうるう秒がない。
だが、もはや天文時に戻せない。
地球の自転にふらつきがあるため、天文時だと今日の1秒と明日の1秒の長さが異なるといったように、日々の1秒が不安定になる。
規則的に秒を刻む中での一定の周波数を前提にした通信技術は機能障害を起こしかねない。
GPS(全地球測位システム)も正確な距離を測定できなくなる。
原子時計は情報通信の高度化を支える半面、その代償としてうるう秒による調整が必要というわけだ。
1972年7月1日を皮切りに、これまでにうるう秒は22回挿入された。
うるう秒とは別に同年元日に10秒が加えられたから、1958年の原子時計導入時からの47年間に地球の自転は32秒延びていることになる。
太陽の周りを回る公転周期が365日よりもやや長いことによる4年に1度のうるう年と違い不定期。
地球の自転速度は気象状態などの影響もわずかに受ける。
昨年12月のスマトラ沖大地震の際は1日の長さが逆に100万分の2.68秒短くなった。
このため、うるう秒については「将来の予測もできない」(片山さん)という。
ちなみに、電波時計は自動的にうるう秒を補正してくれるが、それ以外の時計は元日に1秒戻すことをお忘れなく。
電話時報サービス(117番)は、うるう秒挿入100秒前の1日午前8時58分20秒から、1秒ごとに鳴る電子音を0.01秒ずつ遅らせる。
「自然な形で聞けるよう配慮した」(NTT東日本)と言う。
「午前8時59分60秒をお知らせします」という案内はない。