ヒストグラム
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警察官に対する公務執行妨害事件が10年前の2.8倍を記録するなど、警察の“第一線”の危険が増しているとして、警察庁は来年度から、全国の警察に、太さを2倍近くにして強度を高めた警棒や、車の窓ガラスも粉砕できる警杖(けいじょう)を導入することを決めた。
「制服」による威圧効果が薄れ、容疑者から直接、刃を向けられるケースも急増していることから、腕を保護する耐刃手袋も用意する。
同庁は、装備の“武装化”を進めることで「精強な警察」を取り戻したい考えだ。
同庁によると、全国で起きた警察官に対する公務執行妨害は年々増加しており、昨年は2685件と、1994年の974件と比べて2.8倍に上った。
1か月以上の重傷を負った地域警察官も一昨年が75人、昨年は61人で、殉職者は一昨年が1人、昨年は4人を数えた。
交番やパトカー内での事件も目立ち、今年7月2日には、群馬県大間々町で、パトカーで任意同行されていた住居侵入容疑の男が、隠し持っていた万能ナイフ(刃渡り約6a)で、隣の巡査部長(33)の左胸をいきなり刺す事件があった。
巡査部長は、男の右腕を両手で押さえ込んだものの、男は激しく抵抗し、運転していた別の警察官が車外から男の肩に発砲して、ようやく取り押さえた。
男は3時間後に失血死したが、拳銃を向けられても、「撃てるなら撃ってみろ」と居直ったという。
宮城県登米市の駐在所でも先月23日、勤務中の警部補が中学3年の少年にいきなり背中などを刃物で刺されて重傷を負ったほか、札幌市では今月13日、札幌高裁の法廷で刃物を持った男が暴れ、警察官が腕を切りつけられた。
同庁では「軽いケガなどは報告がないため全容は不明だが、刃物を向ける容疑者は増えている」としている。
このため同庁は、装備強化策として、新型の警棒と警杖を導入することを決めた。
これまでの警棒は、3段に伸縮する長さ約50aのアルミ製だったが、つなぎ部分で折れ曲がることが多かったため、長さを約65aに伸ばし、太さも倍近い2段式にする。
警杖も、木製から持ち運びなどに便利な伸縮式のアルミ製に変え、柄の底面には、車の窓ガラスを破れるように硬質の突起状のガラス粉砕器を付ける。
また、刃物から手や腕を守るため、ステンレスチェーンを内蔵した耐刃手袋も配備する。
一方、容疑者が車をパトカーにぶつけて逃走するケースも増えているとして、全国に3070台あるパトカーに、20倍のズームや夜間でも撮影可能な赤外線モードも備えたビデオカメラを搭載させる。
タイヤの前に置くと、スパイクが刺さりタイヤがパンクする逃走防止器も各パトカーに備え、装備を充実させることで、容疑者の抵抗を封じ込めたいとしている。